150億年は大体10^{18}秒である。サルは一秒間にキーを10個叩けるとしよう。タイプライターにはキーが44個ある(と、キッテル「熱物理学」に書いてあるから信じよう。)。文字の大文字小文字の違いは勘弁するという大サービスをして、すこしでもサルがハムレットを打ちやすくしよう。さて、ハムレットには100、000個の文字があるとして(と、キッテルは言っているが、本当のところは知らない)、サルはハムレットを打ち出せるであろうか?でたらめにタイプした100、000個の文字が正しい(ハムレットの)順序になっている確率は、44分の一の100、000乗である。なぜなら、サルは44個あるキーのうち、どれを押すかもしれない。100、000個の文字の連なりが全て正しいものであるためにはサルが44個のキーのうち、正しい一個を「たまたま」選ぶという偶然が100、000回続かなくてはならないからだ。この確率を計算すると、10^{-164345}という数になる。つまり、小数点のあとにゼロが164、345個続くというとてつもなく小さな確率である。だが、まあ、待て、サルは 10^{10}匹も用意したのだし、宇宙は 10^{18}秒と長めに設定し、しかも、一秒間に10個 もキーが打てるという大サービス付だ。なんとかなりそうなものではないか。この条件でサルたちが打つことのできる総文字数は?10^{10}×10^{18}×10=10^{29} 文字である。ものすごく長い文字列だ。幅2ミリという小さい活字で打っても、その長さは2^{22}キロメーター。光の速度で7×10^{16}秒、つまり、殆ど宇宙の年齢 と同じくらい長くかかるとんでもなく長い文章だ。さて、これにさっきの確率をかけよう。そうすれば、この長い文字列の中にハムレットがある確率がわかる。答えは......、10^{-164316}。なんということだ、殆ど変わらないでなないか!そして、勿論、小数点以下ゼロが164、316個続くような小さな確率は「いかなる実際上の出来事という意味においても0」である。サルがハムレットを作り出すことは絶対に有りえない。