インタラクティブ・サイエンス・コラム


 生命と言えども、 原子からできているので、物質には違いない。では、生命を物質の一存在形態として捉えるとどのようなことが言えるだろうか?まず、生物は水を基本とした存在であるから、水が大切である。ここで大事になるのは温度だ。水があるだけでは駄目で、液体として存在しなくてはならない。過去の地球史を見てみると温度が下がり地球上の水が凍って氷になりかけたことが何度もあったが、完全に凍り付くことはぎりぎりのところでなかったと信じられている。一度でも、地球上の水が全て凍り付くほど温度が下がったことがあれば、生命の進化は停止して一からやりなおしになったはずだが幸か不幸かそういうことは一度もなかったわけだ。では、水が液体で存在できさえすれば生命は物質の存在形態として安定なのかというと実はそうではない。現在の地球の標準的な温度や圧力では生物の体を構成する原子は生命を形づくるより、 別の形の方が安定なのである。従って、生物は物質としてみれば準安定に過ぎないのであり、いつかは個々の原子に戻ることが義務づけられている。これを生命の観点からみると「有限の寿命の後、死亡」という表現になる。物質と言う観点からみると、生命とは誕生以来進化を続けてきた固体としての地球の表面の物質がたまたまとっている存在の一形態、あるいは表面にへばりつく錆びのようなものでしかない。