これまた、殆ど何も解ってないに等しい。人間の大脳にどうして「知性」が現れるか?ということが解っていない、などという高度なレベルではなくて、どうやって情報を蓄えているのか、という基本的な問いにさえ、答えられないのが現状である。現在、我々が計算機と呼んでいるものの情報の記録の仕方は極めて単純でまず、全ての情報を0と1の数時の羅列という2進数に直した後、その0、1の羅列を記録媒体に記録するというやり方である。記録媒体がハードディスクだろうか、MOだろうが、フラッシュメモリーだろうがこの点に関しては全く、同じである。大脳の情報記録方式=記憶の方法については、まず、この方法が試された。つまり、脳細胞のある特定の場所に特定の記憶が蓄えられていると仮定して研究されたわけだ。何か具体的な事物、例えば「おばあさん」を見たり、考えたりすると活性化される細胞(「おばあさん細胞」)を捜すことに多くの労力が費やされた。この試みが徒労に終った後、次に試みられたのは細胞の組合せで情報を蓄えるという方式。10個脳細胞があったとして、1番めと2番めと5番めの組合せで「おばあさん」を表し、2番めと4番めと7番めの組合せで「おじいさん」を表すとかいうやりからである。現在では。このやり方さえ単純過ぎて現実の記憶機構を表現できないと解りつつある。今、試されているのは時間的な細胞の活動度の変化まで考えて記憶の方式を探索するというものである。つまり、2、4、5番目の細胞の活動度があがり、次に、2、7、8番目の細胞の活動度が上がると「おばあさん」で、3、7、9番目の細胞の活動度あがり、次に、1、7、9番目の細胞の活動度が上がると「おじいさん」を意味するとか。とにかく、どんどん複雑になっているのである。今のところ、それでもまだ、複雑さが十分であるかどうかは定かではない。