進化する機械、なんて書くとまたSFじみてると思われるかも知れないが、進化の研究には計算機が精力的に使われている。なにせ、進化というのは地球上でただ一度起きたことであり、進化の研究というと「過去にどのような進化が起きたか?」の研究はできても、進化とはどのような原理で生じて行くものなのか、という研究はしようがない。なにせ、実験ができない。勿論、ハエを飼って遺伝子がどう変移していくか、という実験は可能だろうけれども、これは突然変移の実験ではあっても、進化の実験ではない。進化とは、環境との相互作用で生物がどの様な変移を積極的に(?)子孫に残していくのか、という原理のことである。
そこで、この「進化」を計算機の中で模擬的に行なおうと言うのが、いわゆるA-Life(人工生命)の研究である。T. S. Rayによって1989年に提案されたモデルは小さなDOSマシーンの上のアッセンブラーで書かれた短いプログラムである。「遺伝子」と呼ばれる自分自身の挙動を定義する部分を持ち、これをひたすらメモリーの中に複写し続ける(つまり、「子孫を作る」)。メモリーはすぐにいっぱいになってしまうので今度は「殺し合い」が始まり、淘汰される。突然変移の効果を入れるために自分を複写する時にある確率で間違うようにしておくと、そのうち「強い種」が淘汰されて生き残るのである。最近はマック用のデモソフトもオンラインで手に入れることができるようになった。例えば、Bugsなどは岩だらけの平地で植物を食べながら増殖する「虫」のシミュレーションで、「遺伝子」が淘汰によってどの様に変移していくかを見ることができる(他にもここから同じようなゲームをいくつかdownloadできる)。
A-lifeの更に詳しい説明はここなどを見て下さい(例によって、英語)。