ものを壊すということ


「壊す」という単語は大体、いい意味には使われない。「秩序の破壊者」なんて言う し、キカイダーの敵役の名は「ハカイダー」だった。でも、壊す、という行為には秩 序も隠されている。破壊の中の秩序、それが今回のお話。
「破壊の中の秩序ってなんだ?言葉の矛盾じゃないか?」と思われる人もあるかもし れない。確かにちょっと見ただけでは、破壊の中の秩序を見い出すことはできない。 普通は注目しないような、量に注目しなくてはいけなかったり、破壊をてなずけてや ったりしなくてはならない。しかし、そういうカガクのメガネやカガクの手綱をつか ってやれば破壊は僕らに不思議な秩序を見せてくれる。
ゆっくりと壊すばあい めちゃめちゃに壊すばあい
ゆっくりと壊すばあい
まがりなりにも「秩序」を作りだそう、というのだから、そっと壊してみよう、とい うのはごく自然な発想だ。しかし、「ゆっくり壊す」というのは
意外に難しい。「そんなことないじゃん、紙を「ゆっくりと」やぶく、なんて僕で もできるよ」と思うかも知れないがそうはいかないのである。ものをゆっくりと壊す にはやり方は2つしかない。非常に弱い力をかけて壊すか、ゆっくり壊れるような物 質を採用するか、だ。勿論、言うは易く行なうは難し、である。では、各々の場合を 見てみよう。
非常に弱い力で壊す ゆっくり壊れる物質を探す
意外に難しい・説明しているように
ものを壊す、というのはどういうことか?この世のものは全て原子が結合してできて いる。だから、「壊す」というのはこの原子と原子の結合を解くことである。もっと も、原子と原子の結合の解き方にはいろいろあって、「熱を加える」というのもある 。
水に熱を加えて沸騰させる、鉄に熱を加えてドロドロに融かす、とかいうのがそう だが、これは普通、「壊す」とは言わない。ものをこわす、っていうのは原子と原子 の結合を力を加えて むりやりひっぺがすことに他ならない。ところが、原子とは目に見えないほど小さ なものだから、原子と原子をつまむのではなくて、物質のはじっこをつまんでひっぱ って力を加えるしかない。この力が物質の内部に伝わっていってどこかが「バキッ」 と割れるわけだ。この「伝わる」というのが曲者なのである。力はただ伝わっていく 様な感じがするが、実際には、どんな物質も多少、 伸び縮みする。この伸び縮みを介してしか、力は物質中を伝わることができない。
この伸び縮みが伝わる速度は決まっていて、音の速度なのである。だから、ものを壊 すと、どんなにそっと引っ張ったつもりでも、力は音の速度で伝わっていく。だから 、割れ目も力の伝わる強さ、つまり、音の速度で広がっていく。これはとっても速い 。空気中では音は一秒間に300メートルくらい進むが固体中ではもっと速く、一秒 間に一キロくらい進める。つまり、どんなに大きなものでも一瞬で割れてしまう。我 々が「紙をゆっくりちぎっている」というのは錯覚で、細かく見れば割れ目はすごい スピードで広がっているのだ。だから、「割れ目をゆっくり広げる」というのは至難 の技なのだ。
水に熱を加えて沸騰させる、鉄に熱を加えてドロドロに融かす
水に熱を加えて沸騰させる、というのは要するに水分子が水蒸気と言う気体になって 蒸発することだが、気体、というのは原子と原子がお互いに非常に自由に動けるよう になっている状態なので、
原子と原子の結合を解いていることには違いはない。また、鉄を熱してドロドロに 融かす、というのも、固体の鉄ではしっかりと結び付いている鉄の原子同士の結合を 緩めて、お互いに自由に動けるようにしたことに他ならない。
原子と原子の結合を解いている
ここであわてて付け加えておくと、水、というのは
水素原子二個と酸素原子ー個が結合してできている分子である。水を沸騰させても この水素と酸素の結合が切れるわけではないから、正確には「分子と分子の結合を解 く、というべきである。分子を構成している原子をばらばらにするにはもっとずっと 高い温度にしなくてはならない。そう、すごく高い温度である。この、あまりに温度 が高くなり過ぎて、全ての原子がバラバラになった状態をプラズマ、という。これは 本当に高温の状態だ。名前くらいは聞いたことがあるかもしれないが、例えば、核融 合、というのは何が難しいといって、このプラズマというめちゃくちゃに温度の高い 物質を閉じ込めておくのが難しいのが最大のネックなのだ。また、プラズマ、という 名前はわけもわからずなんとなくカッコいいので、アニメやSFに良く出てくる。「プ ラズマ駆動」とか「プラズマ波動砲」とかいかにもありそうじゃないか?
水素原子二個と酸素原子ー個が結合してできている分子
我々は、酸素二個と炭素一個が結合してできた分子を「二酸化炭素」という。同様に 酸素一個と炭素一個なら「一酸化炭素」だし、窒素分子一個と酸素二個なら「二酸化 窒素」と呼ぶわけだ。しかし、水のことを「酸化水素」とはまず言わない。日常用語 だけですなく、学術文献であってもそうは言わない。今だかつて私が耳にした唯一の 「酸化水素」という言葉は往年の日本製名(迷?)B級SF映画「地球防衛軍」の一シ ーンにおいてである。地球を侵略しにやってきた異星人は最初、友好を装っており、 人間達を自分の工場に招いたりするのだが、そこで事故があり「酸化水素工場に事故 が発生」とか放送が流れる。確か、それが異星人の誠意を疑い始めるきっかけになっ たはずなんだが、筋を良く覚えていない。いずれにせよ、昔の映画人はカガク的教養 もあったわけだ。「水工場」じゃ、様にならないよな、やっぱり。「酸化水素工場」 でなくちゃね。
むりやりひっぺがす
強力な磁石と磁石を引き離すことを想像してくれればいい。原子と原子の間に働いて いる「結合したい」という引力に打ち勝って原子同士を引き離さなくてはならない。 「でも、磁石は引き離してもまたすぐくっつくじゃないか、磁石とは違うよ」と思わ れるかも知れない。破壊、の場合、引き離された原子同士が二度とくっつけないのに はいろいろ理由があるが、例えば、表面の原子の並び方が「壊す」前と後では変わっ てしまう、というのがある。
          N
磁石の例で考えよう。|という棒磁石で物質ができていたとしよう。
          S
これをあるところで切ると下図の様になるが切るとN極やS極が露出して
            N
不安定になる。その結果、|は 横に回転してN-Sになり、面の中どうして
            S
くっついてしまうだろう。そうなってしまえば、もう、もう一度くっつけたところで もとの形には戻ってくれない。これと同じようなことが起きるのが「壊したものがく っつかない理由の一つである。


伸び縮みする
これを忘れると非常に変なことになる。例えば、昔、僕が「特殊相対性理論によれば 光の速度より速く信号は送れない」という話しを聞いた時、この事実を忘れていたた めに非常にわけの解らない疑問を持ってしまったことがある。その疑問とは「うんと 長い棒を持ってきてそれを動かして信号を伝えれば光速より速く信号を伝えられるの では?」と言うものだった。この疑問のどこがおかしいかというと、棒は原子で出来 ているのであり、原子と原子はいろいろな力でひきあって結合しているのであるって 、くっついているわけではない。棒の端を引っ張ると、棒の端の原子が動いて、それ をとな原子が感じて引っ張られて..........と言う風にしか動けないのだ。この「原 子と原子をつなぐ力」自体が光速より速くとなりの原子に伝われない。従って、棒を 使っても光速より速く信号を伝えることはできない。
非常に弱い力で壊す
非常に弱い力、といっても特に難しいことをするわけではない。人間が手で引っ張る とか、機械でひっぱる、となると力が強くかかり過ぎる。もっと、微妙に制御できる 力が欲しい。そこで、ここでは「熱による膨張収縮」の力を用いる。物質は力が加わ ると伸び縮みするし、熱が加わると融けてしまうが、弱い熱ならゆっくりと膨張する 。ゆっくり冷やせばゆっくり縮む。
この力を利用して「壊す」のだ。

まず、薄いガラス板(プレパラートの様な)を暖 める。そして、冷たい水の中にゆっくりとつける。そうすると、ガラスが冷えて縮む 時の力で、ガラスにひびが入る。こうやってゆっくりと弱い力でできたひびは我々が 思い浮かべるようなギザギザの割れ目では無くなる。 ガラス板を水につける速度がすごくゆっくりの時とか、水とガラス板の温度差があま りない時など、ガラスを割る力は弱くなる。そういう時はガラスの真中にきれいなま っすぐの割れ目が走る。温度差を大きくしたり、ガラスを水に入れる速度を大きくし て割る力を徐々に大きくしていくと、何と!割れ目はきれいなカーブを描くようにな る。勿論、力を強くしていくに従って、割れ目はおなじみのキザキザパターンになっ ては行くが。

図1 ゆっくり壊した時の様々な割れ目
(a) まっすぐなひび
(b)きれいなカーブを描くひび (Crack_2D-2.qt.hqx):ひびがきれいなカーブを描きながら伸びていく
(c) ギザギザのひび割れ(Crack_2D-1.qt.hqx):(b)図とは異なり、ひびの先端だけを追っている。

この様子を目で見るのは実に難しいのだが、幸いなことに現在はコンピュータシミュ レーションでこの様子を目で見ることができるようになった。きれいなカーブを描く ひび割れの場合に、ガラス板にかかっている力の大きさを色で表現した コンピュータグラフィックスを見て欲しい。弱い力でゆっくり壊せば、破壊だって きれいなパターンを作り出せる。そして、実際、それはある時には「奇景」と言われ るみんなが金を払って旅行してまで見に来る すばらしい景観を作ることもある。 (ムービー提供:東北大学電気通信研究所/早川美徳(はやかわ よしのり)


この力を利用して「壊す」のだ。
勿論、この力だって、「強い力」になりうる。冷たく冷えたコップに熱湯を注げば、 コップは割れてしまう。エイリアン3でリプリーが宿的エイリアンを徒手空拳で「破 壊」するのに使ったのもこの力だ。もっとも、この場合は「熱く熱したコップに冷水 を浴びせかける」方だが。
コンピュータグラフィックス
crack2d.mpg: かかっている力の大きさが色で示されている。赤い方が強い力。やっぱり、割れ目の 先端に強い力がかかっている。 (ムービー提供:東北大学電気通信研究所/早川美徳(はやかわ よしのり)
すばらしい景観を作ることもある。
写真は数年前に北海道旅行をした時に層雲峡で撮影した「柱状節理 」というものである。

柱状節理 (北海道層雲峡)
岩が柱状にきれいに割れている。これは仲間うちではここで述べた「ゆっくりとした 破壊」のせいだ、ということになっている(専門の地質学者の方がどう思われるかは 解らない)。どういう関係があるか?
さっき、「直線の割れ目が走る」とか「きれいなカーブを描く」とか書いたけれど、 これは「幅の狭い」ガラス板の話し。幅が広くなると複数の割れ目が平行に走るよう になる(
Crack_2D-1.qt.hqx)。察しのいい人は解ったと思う。これを「板」で なくて「柱」でやったらどうなるか?いろいろな太さや長さの柱の「破壊」の、いろ いろな角度から見たシミュレーション(いずれも割れ目の先端のみ図示)を見て頂こ う。詳しい説明はいらないだろう。いつも、同じ太さの細い柱に割れていく。これが 柱状節理の原因なのだ!(と、思うけど.....)まあ、実際には、地底で熱く熱せら れた岩石が徐々に冷える時に、とかいうことを考えているんだけど、ちゃんとした証 明とか観測とか実験はまだ無い。

柱状節理 (?)のムービー:
斜めから見たところ
Crack_3D-1.qt.hqx: Crack_3D-2.qt.hqx: Crack_3D-4.qt.hqx: Crack_3D-5-long.qt.hqx: Crack_3D-6.qt.hqx:
上から見たところ
D-longcolumn-top.qt.hqx: Crack_3D-5-topview.qt.hqx: Crack_3D-7-topview.qt.hqx:
(ムービー提供:東北大学電気通信研究所/早川美徳(はやかわ よしのり)


ギザギザの割れ目では無くなる。
この研究は元物理学会会長の平田森三という先生が始めたのだが(この人は寺田寅彦 の弟子)、東北大学電気通信研究所の佐野雅己先生と学生の湯瀬さんと言う人がきれ いな実験として完成させ、世界になだたる科学雑誌、ネイチャーに掲載された。詳細 は1996年9月末に発売になった岩波書店発行の雑誌「科学」10月号、寺田寅彦特集を御覧下 さい。同特集号にはその他にも同じようなおもしろい話しがいっぱい載っています。
ゆっくり壊れる物質を探す
ゆっくり壊すのが面倒なら、人間が手でひっぱってもゆっくり壊れる物質を探せばい い。それは別にそんなに難しくない。ものを壊す力は音の速度で伝わると言った。そ して、空気中より固体のほうが音速が速いのだ、と言った。それは空気より固体が「 硬い」からだ。硬いからこそ、音速が速い。逆に言うとうんと柔らかい物を探せば音 の速度が遅くなり、従って力の伝わる速度も遅くなり、破壊もゆっくりとした物にな る。「空気だって音の速度は一秒間に300メートルだ。空気より『柔らかい』物質 なんてあるのか?」と思うかもしれないが、まあ、勿論、空気より『柔らかい』物質 なんて無いけれど、「空気より音の速度が遅い物質」なら存在する。それはゲルだ。

ゲル、なんていうと何だか妖怪人間のようだが、れっきとした科学用語で我々にも身 近な物質がちゃんとゲルの仲間として含まれている。例えば、寒天だ。寒天を手で引 き裂いたときの破壊はゆっくりやれば手でも十分「非常に弱い力で壊す」を実現する 。写真はゲルをゆっくりと手で引き裂いたときに出来た割れ目の表面に出来た模様だ。


ゲルをゆっくり手で引き裂いたときに割れめにできるウロコ状の模様。

特に注意深くしなくても、また、実験用のゲルでなくてその辺で売っているゼリーと かでもゆっくり引き裂けば、こういうきれいなウロコ状の模様が出せるはずだ。暇だ ったら、やってみよう。このようにゆっくりやれば「破壊」という現象は我々にいろ いろ「秩序」を意味する「模様」を見せてくれるのだ。  ちなみに「手でさっと」引き裂くと割れ目にはきれいなウロコの模様ではなく、お 馴染みのぎざぎざが現われる


ゲルをさっと手で引き裂いたときに出来る割れ目の上のぎざぎざ。

ちなみに、この「ぎざぎざ」は、鋼鉄をすさまじい力で引き裂いたときにできるぎざ ぎざ模様と良く似ている。硬いものも柔らかいのも「音速=力の伝わる速さ」で「速 く」引き裂けば同じ様な模様を残すというのは面白い。鋼鉄を「ゆっくり」引き裂く ことが出来れば、逆に、ウロコ状の模様が出来るんだろうか、ひょっとして。
写真提供:京都大学基礎物理学研究所、教授関本謙・同大学院生中沢初美。


めちゃめちゃに壊すばあい
「ゆっくり壊せば何か秩序があってもそりゃーおかしくないけど、そんなのズルだ。 壊す、というからにはガッシャーンと壊すんでなくちゃね」と言う向き用の話題を提 供しよう。確かに、壊す、というのは思いっきり力任せに
粉々に壊す、というのがもっともそれらしい。しかし、それでも、何らかの秩序は 存在する。秩序、というより法則、と言ったほうがいいかもしれない。
 ガラスの靴でも凍ったポテトでもいい、硬くて脆いものを床に叩き付けたりハンマ ーで思いっきり叩いたりして「壊し」たら、どうなるだろうか?

「どうなるって、粉 々になるでしょ?」と言うかもしれないが、本当に粉々になるだろうか?自動車のフ ロントガラスみたいに事故で割れたガラスが人体に付き刺さらないようにわざと粉々 になるようにしてあるものならともかく、そうでなければ、大きいかけらと小さいか けらが入り混じるはずだ。だが、どのような大きさのものがどのような比率で混じっ ているのか?「そんなの解るわけないじゃん」というなかれ。これにはれっきとした 法則がある。そして、その法則は 宇宙にまで及んでいる。人間はものを壊すことが出来る。好きなものを好きなだけ 。しかし、所詮、自分の好きなように壊すわけにはいかない。そこには厳然たる法則 性がある。人間なんて所詮、「自然」というお釈迦様の手のひらの上で全力疾走して いる孫悟空に過ぎない、のかもしれない。


粉々に壊す
fragmentation.mpg
(ムービー提供:東北大学電気通信研究所/早川美徳(はやかわ よしのり)
法則・ 五乗して立方根をとる
大きいかけらと小さいかけらの数の「比」が決まっている。例えば、重さが10グラ ムのかけらと重さが100グラムのかけらの数を比べて見よう。どっちが数が多いだ ろうか?まあ、どう考えても、軽いかけらの方が数は多いだろう、と思える。確かに 、その通りだ。軽いかけらの方が数が多い。では、どのくらい数が多いだろうか?ま ず、数を比べるかけらの重さを決める。そして、各々の数を数える。軽い方の(すな わち数が多い方)かけらの数が重い方(つまり、数が少ない方)の何倍あるか、を知 るためには、重い方のかけらの重さを軽い方のかけらの重さで割り、その数を5乗し てから立方根をとる。これで、求めることが出来る。たとえば、100グラムと10 グラムなら100を10でわって、10。これを5乗して10万。10万の立方根は 約46なので、10グラムのかけらの数は100グラムのかけらの数の約46倍、多 い、ということになる。これが「隠された法則性」である。
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Q1:どうしてそうなるの? Q2:いつも同じなの?
A1:物が壊れるときはいままで何度も説明しているように外から加わった力 が音速で伝わって物質が変形して壊れる。物がハンマーや床との衝突による衝撃で壊 れるときも同じである。ただ、衝撃があまりに大きいので、衝撃が物質中を伝わるや 否や力がが加わった物質は崩壊してしまう。いわゆる「衝撃波」というやつである。


衝撃波で崩壊する物質

衝撃が加わったばかりのときは衝撃波の力は強く、物質を粉々に破壊できる。ところ が、物質中を伝播して行くうちに衝撃波のエネルギーは物質の破壊に使われて消耗し だんだん弱くなって行ってしまう。その結果、あまり粉々に破壊することはできなく なり、かけらは大きくなっていく。かけらが大きくなれば当然、かけらの数は少なく ならざる終えない。衝撃波の先端の面積はいつも同じだからだ。こういう議論を数学 的にきちっとやると、「 五乗して立方根をとる」とかいうかけらの数の法則が導き出せる。
A2:必ずしも同じではないことは、A1:からもなんとなく解るだろう。衝撃波が外 からではなく中から加わったときなど、衝撃波の伝わる面の大きさが物質中を伝播す るに従って広くなって行ってしまう。そうなると、衝撃波が弱くなるのと同時に一度 に破壊しなくてはいけない面積も増えて行くから、かけらはますます大きくなってし まう。その結果、どういう重さのかけらがどれくらいあるか、という部分は変わって しまう。その他、立体を壊すか、板を壊すか、棒を壊すかで、みんな結果は変わって くる。 もっともっと詳しく


内部からの破壊。衝撃波の面積がだんだん広くなる。


もっともっと詳しく
あー、あなたも好きですねー。話がどんどん難しくなりますよ。いいんですか?
まず、
五乗して立方根をとる、の「立方根」の方、これは立体を壊すか、板を壊すか、棒を壊 すかで変わってくる。立体なら立方根、板なら平方根、棒ならそのまま、である。懸 命なる読者の方々ならこれが物質の「次元」に関係していることに気付かれるかもし れない。立方根とはつまり、3回掛け合わせてその数になるような数を求めろ、とい うことだ。平方根ならこの「3」が「2」になる。一方、物質の「次元」は立体なら 3、平面なら2、棒なら1、である。つまり、 五乗して立方根をとる、の立方根の部分は「物質の次元」という値で決まってくる のである。
次に、 五乗して立方根をとる、の「五乗」の方だが、この五、の方は今度は衝撃波の伝 わり方によって決まってくる。衝撃で壊された領域の体積が衝撃波の伝わった距離と ともにどう変わるか、に関係している。具体的には破壊領域の体積が衝撃波が伝わっ た距離の何乗程度の大きさか、ということによっている。内部からの破壊の場合、破壊された領 域の体積は球形であるから、伝播距離の3乗で大きくなる。一方、普通の 場合、破壊領域の大きさは伝播距離に比例して大きくなるので伝播距離の1乗、とい うことになる。
で、 五乗して立方根をとる、の五、とどうかんけいするかというと、この部分は

2×破壊する物質の次元(立体なら3、板なら2、棒なら1)-(破壊領域の体積が 伝播距離の何乗かという数)

で、決まる。普通は、立体を壊し、破壊領域の大きさは伝播距離に比例して大きくな るので伝播距離の1乗、ということなので2×3-1=5、になる。 これがどうしてかって?うーん、もう口で説明するのはちょっと難しい。 御免なさい。


宇宙にまで及んでいる
アステロイド・ベルト、あるいは、小惑星帯、というのを知っているかな?火星と木 星の間に横たわる、小さな岩のかけらの集合体だ。この小惑星の重さの分布は「もの を普通にハンマーなどで激しく叩き壊したときに見られる
」とほぼ同じなのだ。だから、小惑星帯ってのは、何かが壊れて出来たもので あり、その壊れ方は大きさの違いにも関わらず、ガラスの靴や冷凍ポテトと変わらな いってことだ。物が壊れるってことひとつをとってみても、よく見てみれば宇宙のロ マンとつながることもある。これがカガクの醍醐味なんだ