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=== Interactive Science Column Mail ==================================
インタラクティブ・サイエンス・コラム・メイル
1998/3/28号 (不定期刊)
本日のお題:シリコン生物は存在するか?
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最近、配信が途絶え気味で申し訳ない。実は、4月から、某子供向け新聞で半 年間、週一で1000字のコラムを書くことになってしまった。引き受けたの はいいのだが、週一、1000字と言うと今書いているこれとモロにぶつかっ てしまう。で、こっちがお留守になてしまった。申し訳ない。

で、ネタ切れ気味なのだが、例によって困った時のPlanetary Report頼りでお 茶を濁そう。3/4月号には「生物は炭素基盤でなくてはいけなのか?」とい うおもしろい記事が載っている。我々の体は炭素をベースとして出来ている (ここで、「体の主成分は水であり、水には酸素と水素しか含まれて無いぞ」 とかいうちゃちゃを入れないように)。しかし、何も炭素で出来ていないと生 物と呼べない、とは誰も思わないだろう。大方の生物学者は生物の条件として (1)3次元構造を持つ、(2)化学反応をする(代謝の意)、(3)自己複製の手続き を保有している、(4)自己の複製にその手続きを用いる、(5)突然変異と自然淘 汰で進化する、の5つをあげるという。どこにも「炭素基盤であること」など とは書かれていない。

この記事では「存在量」「化学反応性」「化学結合ボンドの数」「(分子の) 安定性」「多様性」と言った観点から炭素以外の生物がありうるかどうかを議 論している。まず、存在量では、炭素の代わりにSFで良く使われるシリコンが 考慮されているが、これは太陽系での存在量が炭素の10分の1しかないそう で、シリコンの次にSFで登場するボロンにいたってはわずか100万分の1だ という。また、化学反応性から考えてもシリコンはSiO2、つまり、砂になりや すく、一度砂になったら滅多なことで分解しない。従って、シリコン生物がい たとしても地球上では化学反応が起きないので生命を維持できないだろう、と いうことになる。化学結合ボンドの数、これは必ずしも炭素有利とは言えない がシリコンはボンドを6つ持つことがあり、常に4つしか化学結合ボンドを持 たない炭素にくらべると、使いにくい。あんまり「手」が多いと原子が混みあ い過ぎてフレキシブルな構造がとれないからだ。

安定性、という観点から見ても、同じ温度なら、シリコン=シリコン結合は、 炭素=炭素の半分の強度しか無い。もっと悪いことに、シリコン=酸素結合 は、シリコン=シリコン結合の2倍以上も安定だと言うことだ。酸素がたくさ んある環境では、シリコン生物は「錆びて」しまうことになるだろう。多様性 という点から見ても炭素化合物の殆ど無限ともいえる組み合わせに対して、対 抗できる原素は存在しないと言う。

結局のところ、月並みな結論だが生物が炭素基盤だということは、「ベスト だ」ということらしい。しかし、勿論、宇宙は広いのだし、地球とは全く異 なった環境で生命が誕生した場合は話は別だ。この記事はこんな文で締めくく られている「もし、炭素基盤でない生物がいたとしても我々がそれを『検出』 するのはすごく難しいだろう」。つまるところ、ソジャーナーのカメラには一 杯「生物」が写っていたのに我々には全然解らなかったのかもしれないのだ。 もっとも、逆に火星人はとっくに地球に何度も来ているのにお互いにまったく 気付いていないだけなのかもしれないが。



○インタラクティブ・サイエンス・コラム・メイル1998/3/28(購読者:1443名)
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